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指物師さんの気まぐれ通信。 


by sashimono

大田原市の竹工芸家 勝城蒼鳳さん  人間国宝に

そのひとを最初にみたのは
2月に行われた父の個展でした。

会場受付からちょっと離れた入口玄関のほうから
ちっちゃなおじいちゃんが
杖をつきながらひょこひょこ歩いてくる。
その背広姿はどこか不似合いで
ものすごくゆっくりな進行速度。

ひょっこりひょっこり。


そうしてこうして受付前まで来たのですけれど
記帳をお願いしたのですけれど
目録を渡そうとしたのですけれど
そのままひょっこひょっこと会場に入っていこうとしています。
「あのぉ! お手数ですけれどもぉ ご記帳お願いできますでしょうかぁ」

再度おじいちゃんに声をかけてお願いしたら
おろろっ? と、たまげた様子で
記帳してくださったのです。
なかなかの達筆でした。



先日 そのおじいちゃんが重要無形文化財保持者
いわゆる「人間国宝」に認定されました。

栃木県大田原市の竹芸家 勝城蒼鳳さんです。


人間国宝というとどうしても気難しそうな、いかめしいイメージがあるのですが
どちらかというと気取らず、田舎のおじいちゃんというような感じで
好々爺という言葉がぴったりとあてはまる柔和な方です。

勝城さんの人柄をあらわす、こんな話があります。
私の父とは、木工芸家として駆け出しだったころから
親しくさせて頂いているのですが
御呼ばれになったある日のこと。
せっかく来てくれたのだから手土産にでも、竹籠をくださろうというのです。
それで箱書きをしようといって奥のほうから
「とらや」 の紙菓子箱をもってきました。
父がいぶかしげにみているとその紙箱の中には
筆と硯が入っていてそれで箱書きをしたそうです。
その飾ることのない素朴な暮らし方と振る舞いにいたく感動した父は
のちに硯箱をつくって、その竹籠と交換しています。

写真はそのときに頂いた  根曲竹花籃 「渚」
大田原市の竹工芸家 勝城蒼鳳さん  人間国宝に_d0063059_23115167.jpg

やや民芸的な色合いの強い、素朴で逞しい作品です。


もともと農作業のかたわら竹芸の道に入られた方なので
政治的な方面にはからきし疎く、技術的には最高のものをもちながらも
なかなか十分な評価がなされてきませんでした。

県内の竹芸家では飯塚小かん斎(故)に次いで2人目になります。
本当に喜ばしいことですね(^^)
by sashimono | 2005-07-25 15:31 | ちょっぴりピンぼけ